スマホ音声ガイド導入事例 ~おたる水族館~

「水槽の中ば、目ん玉凝らして見てみてや!」

1958年に設立し、多くのリピーターに愛され、一昨年は年間入館者数が40万人を超えました。
水族館の人気者たちによるショーや展示はもちろん、数々の希少生物の繁殖に成功するなど様々な実績を持つ北海道を代表する水族館。それがおたる水族館です。
今回は、そんなおたる水族館に”北海道弁で語り掛けてくるスマホ音声ガイドが誕生した”と聞きつけ、取材をさせていただきました。

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大自然の魅力を切りとった水族館

おたる水族館のエントランス

おたる水族館は、国定公園に指定された海岸に面しており、その海をそのまま仕切ることで設けられたプールでは、魚の群れや海獣たちが自然にごく近い状態で飼育されており、自然界の魅力をよりリアルに目にすることができます。

そんな立地からかときどき野生のトドが迷い込んで来ることもあるそうで、スタッフが遊び心で「トド募集」の看板を海に向けて掲示したところ、毎年のようにトドが入り込んで来て手に負えなくなったので看板を取り外した、というエピソードなども持つ、まさに自然と溶け合ったような水族館です。

そんなおたる水族館で飼育されている生き物は現在、魚類・爬虫類・無脊椎動物など約250種5000点。
中には「幻の魚」とも呼ばれているイトウを始め、キタサンショウウオやニホンザリガニといった北海道の希少生物たちや、世界的にも飼育展示が珍しいネズミイルカなどが含まれています。他にも世界最大級のカレイやミズダコといった特大サイズの生き物たちもおり、北海道のスケールの大きさと自然の豊かさとが感じられるラインナップとなっています。

テレビ・SNSでも注目されるユーモア

おたる水族館のポスター

一方、おたる水族館といえばそのユーモア溢れる展示方法やパフォーマンス・宣伝活動でしばしば世間を賑わせていることでも知られています。

「自由気ままなペンギンショー」や衝撃的なキャッチコピーが話題となったポスター「鮭は飲み物。」シリーズなどはテレビ・新聞といったマスメディアだけでなく、各種SNSでも拡散されるほど。

また他にも飼育担当者による手書きポスター「キタサンショウウオが見つけられません。」や海獣たちの好き嫌いを克服する為のプール「コマイ道場(※)」の設立などなど、その活動の随所に散りばめられた大小のユーモアに魅了されるファンも多く、おたる水族館の高いリピーター率を支える要因のひとつとなっています。

そんなおたる水族館に誕生した「北海道弁スマホ音声ガイド」とは、いったいどんな内容で、どのような経緯で生まれたのでしょうか?今回は音声ガイドの制作をご担当された営業推進担当の梅津真平様にお話を伺うことができました。
(※コマイは飼料に用いられているタラ目タラ科の魚)

北海道弁音声ガイド 誕生のきっかけ

音声ガイドQRコードを読み取る画像

1-1 音声ガイドの根本にして最大の問題

おたる水族館には、これまでにも音声ガイドは存在していました。
その内容も工夫が凝らされており、紹介する生き物には学術的な珍しさだけでなく興味を引くエピソードを添え、解説は聞き手に分かり易く平易な内容に、またガイドの口調は親しみを込めて柔らかく、ときにダジャレやユーモアを織り込みながら———と考えられたものでした。

しかしそんな音声ガイドにも大きな問題が。利用率が上がらなかったのです。
ポスターやリーフレットへの掲載、スタッフによる直接のお声掛けなど、来館者への周知にも努めていましたが、その利用状況は必ずしも満足のいくものとはならなかったそうです。
「せっかく音声ガイドを作っても、聴いてもらえければ意味がない!」

1-2 聴いてもらえる音声ガイドづくり

利用率を向上させるにはどうすればいいのか。

ポスターの改訂など、周知ツールのブラッシュアップを繰り返してきた梅津様の試行錯誤は、いよいよ音声ガイド自体を作り変える段階へと突入しました。それは「音声ガイド自体に利用率向上のきっかけを盛り込もう」という発想からだったそうです。

これまでの音声ガイドにおいて行われてきた工夫は、「聴き手を楽しませ・生き物への興味を呼び起こし・その生態が分かり易く伝わる」という音声ガイドの中身に軸足を置いたものでした。これらは実際に利用した人の満足度には繋がりますが、これから音声ガイドを利用する為の<きっかけ>には直結していなかったのです。

そこで今度は「聴いてみたくなる」工夫を音声ガイドへ加えようという、新たな視点によるアプローチが始まりました。

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誕生!北海道弁スマホ音声ガイド

リーフレットの画像

2-1 そうだ、北海道弁にしよう

最初に思いついたのは、有名人を読み手に起用する案でした。お笑い芸人の語る音声ガイド。これはきっと話題になるに違いない。きっと楽しい音声ガイドになることは間違いない。しかし、そんな予算もない。限られた条件の中で見つけたのは、自分たちの言葉「北海道弁をフックにしよう」という発想。

こうして北海道弁音声ガイド制作がはじまりました。
「草刈りから広告制作まで、家内制手工業でなんでも!」とは、梅津様が語る総務・営業課の仕事内容。その言葉の通り、今回の音声ガイドの原稿も飼育員さんの話をもとにご自身で作成したそうです。水族館の音声ガイドというと、その原稿は飼育員さんや外部研究者の方など専門家が執筆しているのかと思いきや、これは少々意外なお話。

原稿の作成は、まず飼育員の皆さんからのネタ探しから始まります。飼育員との雑談や一般のお客様とのやり取りでドラフトを作ったそうです。
おたる水族館の音声ガイドが生き物たちを語る時、その言葉はとても柔らかく、生き物たちへの親しみと愛情が込められた温かいものであると感じます。それは、飼育員の皆さんの自然な“おしゃべり”の中からあふれ出す生き物たちへの愛情を丁寧に集めた言葉だからなのかもしれません。

こうして集められた生き物たちのエピソードをまずは標準語で原稿にまとめていきます。この時におたる水族館名物であるユーモアと遊び心もトッピング。次に、学芸員の古賀崇様が監修として参加。出来上がった原稿をチェックし、解説内容や事実関係に誤りが無いかを確認して内容を固めます。そして最後に、梅津様が標準語原稿を北海道弁へとリライトを行って原稿の完成となりました。

2-2      実はあれは北海道弁の中の小樽弁なんです

それは標準語原稿を北海道弁へリライトするくだりを伺っていた時に、梅津様から飛び出したまさかの発言。
「正確にいうと、あれば小樽弁なんです」

一口に北海道の方言といっても実に様々。
海岸部方言と内陸部方言とに大きく分かれるそうですが、実際には地域や年代によっても更に違いがあり、小樽弁もその一つ。今回の音声ガイド制作にあたっては、地元の小樽弁で語ろうとなりましたが、小樽弁も一つではなかったのです。小樽弁の中でも内陸部と沿岸部とでは違いがあり、話す年代によっても違いがありました。さらにおたる水族館がある沿岸部では漁師言葉である「浜言葉」も使われており、これにいたっては小樽弁ネイティブスピーカーでも何を言っているのか分からないのだとか。
そこでリライトにあたっては、小樽弁の味わいは残しつつも幅広い層に分かり易そうなところで調整する、といった工夫もされていたそうです。

2-3 音声ガイドの読み手選び

原稿が完成すれば、あとは読み手選びです。
今回は方言の活用がウリなので地元小樽出身のスタッフがご担当、かと思いきや。なんとおたる水族館の正規職員24名の内、半数以上が道外出身者なのだといいます。さらに残りの皆さんも道内とはいえ小樽以外の出身者も多く、小樽弁の使用者はごく少数という状況だったのです。
今や水族館の職員といえば、人気の職業。わずかな募集人数に対して、全国から3桁に上るほどの応募があるのだといいます。とても喜ばしいことですが、担当者にとっては少々困ったことに。

『誰か小樽弁の話せる人はいないだろうか。できれば女性がいい。いっそ近くの民宿の名物お姉さん、ジュンコさんにお願いできないか。そうだ!ユニ〇ロのCMにも出ていたからいいんじゃないか?———いや、ジュンコさんの浜言葉は俺でも分からん!』
長い検討の末、最終的に音声ガイド制作会社が推薦した北海道出身の女性ナレーターへ依頼することとなります。

収録に際しては、まず梅津様がネイティブな小樽弁の抑揚で原稿を読み上げる音声サンプルを収録。続いて北海道出身ナレーターがそれを参考に本番用の音声を収録する、という流れで進められました。数パターンのテストを経て、無事収録も完了。こうして新たなスマホ音声ガイドが完成しました。

「よりメジャーな感じがするから、“北海道弁”音声ガイドって名乗ってます(笑)」
おたる水族館にユーモアと地域性が込められた新たな名物が誕生しました。

次なる音声ガイドへのアイデア

ペンギンの画像

最後に、新たなスマホ音声ガイドを制作されたばかりですが、他施設で気になっている音声ガイドや次なる音声ガイドのアイデアなどをお持ちとのことでしたので、そちらについてもお聞きしてみました。

3-1 スマホ独自の機能を活かした音声ガイド

「他施設ですが、音声ガイドの中に近隣の施設や店舗で利用できるクーポン券や謎解きなどを盛り込んだものもあると知り、興味を持っています」

音声ガイドの再生機が古い音声専用機からスマートフォンへと移行する中で、近年続々とスマートフォン自体の性能を活かした特色ある音声ガイドが増えています。

スマホ音声ガイドの特徴
・音声だけでなく、画像や映像が使用することで膨大な情報量が集約できる
・スマホを利用した既存のサービス・アイデアを音声ガイドへ活かすことができる


地域クーポン謎解きイベントなども、まさにこの特徴を活用した例といえます。
こういった工夫を凝らすことにより、施設自体の来場者数を上げると共に、音声ガイド自体の利用率や視聴完了率(音声ガイドのコンテンツが完全視聴された割合)を上げる効果も期待されます。

3-2 多言語版、方言音声ガイドの制作

「今回、北海道弁バージョンとして変更した音声ガイドは日本語のみ。もともと音声ガイドは日英中の三か国語なので、次は英・中の方言バージョンも作りたいと思っています。英語の小樽弁はないから、シンガポール訛の英語とかかな?」

まさかそんな構想をお持ちだったとは!さすがはおたる水族館。
こうした自由な発想とユーモアが固定ファンの拡大と高いリピート率に繋がる秘訣なのでしょうか。 実現したら是非また取材させていただきたいと思います。

まとめ

トドの画像

おたる水族館の北海道弁スマホ音声ガイド、いかがだったでしょうか?
筆者は「音声ガイドづくり」というと、つい利用者になにを・どのように紹介するかといったディレクター的な考え(制作)に捉われがちですが、実際には「利用率を維持・向上するにはどうするか」といったプロデューサー的な考え(制作)も不可欠なのだと改めて感じたインタビューとなりました。

低予算で抜群の利用率を誇る音声ガイドがある一方、高額の予算を投入してアプリ開発や有名人起用をしたけれど利用率がサッパリだったということも珍しくない、音声ガイドの世界。
重要なのは自由な発想を大胆に実行する、ユーモアと行動力なのかもしれません。

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