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「いまのキミはピカピカにひかって~♪」

高級感あるフロントエリア、フォトジェニックなカフェ、アクターによる生パフォーマンスや生演奏、世界各地の大自然の風景と星空を見ながらカクテルを楽しむ。
何の話かと思われる方もおられましょうが、全てプラネタリウムのお話。今、プラネタリウムは星の輝きを見るだけではなく、星にまつわる様々なイベントやオシャレ体験が詰まった総合エンタテイメント空間となっているのです。

2018年12月のオープン以来、最新のテクノロジーと斬新なアイデアの数々でさまざまな作品やイベントを発信してきたのが有楽町にあるコニカミノルタプラネタリア TOKYO
こちらでスマホ音声ガイドを活用した新感覚のプラネタリウム作品の上映がスタートしたと聞きつけ、さっそく取材へと行って参りました。
果たして、どのような作品が上映されているのでしょうか?

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最新のプラネタリウム事情

今回取材させていただいたのは、2021年2月10日に上映が始まった『星の美術館』。

こちらのプラネタリア TOKYOには2つのドームシアターに1つのVRアトラクション(他にもカフェとショップが併設)がありますが、『星の美術館』はその内の多目的デジタルドームシアター(DOME1)での上映作品となります。
DOME1は多目的の名の通り、星空と音楽ライブや各種パフォーマンスとのコラボレーションなど、これまでとは異なった様々なプラネタリウムの楽しみ方が実現できるよう作られており、筆者の知っているプラネタリウムとは色々と異なっていました。

まず、プラネタリウムのシンボルとも言えるアノ球状の投影機の姿がありません。代わりにドームの壁面から天井にかけての全天周モニターには7台のプロジェクターによる映像が投射されます。ドーム状の天井に、まるで液晶画面かと思うほどクッキリとした映像が映されるのですが、聞けば最大8Kの高解像度映像まで投影可能で、星空だけでなく他にも昼夜問わず様々な映像を映し出すことができるとのことです。

今回は『星の美術館』というタイトルに合わせて入場時のドーム内は美術館を模した内装が映し出されていたのですが、星や夜空を題材とした絵画とそれが掛けられている深い濃紺の壁、そしてその濃紺との対比が印象的な白い腰壁に扉、そして天井を透かして頭上に星が輝いている、ととても幻想的。さらに美術館独特の凛とした空気感すら感じさせる仕上がりです。これが実際には全面ただの白い壁なのだとは、分かってはいてもすぐにはピンとこないほどに精巧なものでした。

また座席は固定座席ではなく、深くゆったりとしたアウトドアチェアやクッションが用意されており、催しに合わせて座席位置や視界の設定ができるようになっています。
滲んで浮かび上がった光の玉を、古い映画館のような硬い座席で眺めていた思い出の中のプラネタリウムとは全くの別物。作品の上映が始まる前にその美麗な映像と技術の進化に驚きの声を漏らす来場者も少なくないのだとか。
こんな環境で上映される最新作『星の美術館』とは一体どのようなものなのでしょうか?

『星の美術館』とは!?

スマホ音声ガイドを活用したプラネタリウム作品『星の美術館』は、5つの異なる星空解説の中から来場者が聞きたいもの3つを自由に選び、自前のスマートホンとイヤホン・ヘッドホンを使って楽しむというコンセプトで、音声ガイドシステムを補助的ではなく主軸に据えた作品となっています。

来場者はまず入場の際にスタッフがタブレットで提示するQRコードを読み込み、特設サイトへの接続状況をチェックしてもらい指定のシートへ。特設サイトの冒頭には、本作の楽しみ方やオススメの星空解説についての案内の他に音量テストが用意されているので、持参したイヤホンを使って音量調節をしながら5つある星空解説の中からどの3つを選ぼうか思案します。

ドーム内はフリーWi-Fiが用意されている他、イヤホンを忘れてしまった方向けに館内のショップでイヤホンを販売してくれていると至れり尽くせりですが、イヤホンは数に限りがあることと、スマートホンの機種によっては対応していない場合もあるので愛用のイヤホン・ヘッドホンを忘れずに持っていきたいところです。

上映時間になり、スタッフの声に促されて最初に選んだ星空解説の再生ボタンにタッチすると『星の美術館』がスタートします。1本目の星空解説が聞き終わる頃、頭上の星座絵が色を変化させて2本目へ。再び星が色を変えて3本目。星空解説1本あたりが約10分、スマートホンの操作時間も含めて全体で約40分のプログラムです。

制作過程 ‐そのアイデアがビッグバン-

それではまず本作の制作の流れを見てみましょう。

1-1 「音声ガイドって面白く使えるんじゃないか?」

そんなアイデアからスタートしたのだと語るのは、ご自身も本作品のプロデューサーを務められ、今回の取材で案内役を引き受けて下さったコニカミノルタプラネタリウム株式会社 営業統括部コンテンツグループの嶋津奈穂さま。

はじまりは昨年の8月。制作プロデューサーのお一人が趣味の美術館やアニメ関連イベントへと足を運ぶ中で見かけた音声ガイドに着目し企画が提案されました。すると嶋津さまと他もうお一方からも「こうやったらもっと面白い!」「それ絶対オモシロイ!」とドンドン“おもしろい”が肉付けされていき、この3名がプロデューサーを務める形で『星の美術館』の制作は始まったのでした。

1-2 具体的な制作は、まず全体の構想から

プラネタリウム作品の制作はまず作品のボリュームを決め、シナリオの概要をまとめつつ効果的に伝える為のキャスティング、運用方法を実際の現場スタッフと相談し、映像の作成と多岐に亘ります。

はじめに来場者に星空解説5パターンの内から3つを選んで楽しんでもらうというコンセプトをもとに、1本あたりの解説の長さは約10分、全5本で約50分の音声を用意することが決まりました。これは通常20~30分の解説音声と比較して長さ・シナリオ量がドンと1.6~2.5倍。さらに通常は1人のナレーターが収録するところを5本それぞれ別のナレーターを起用するので作業量はさらに倍、までいったかは定かではありませんが、大がかりなものとなったそうです。

1-3 運用方法、シナリオ、映像の制作へ

シナリオ作業と並行して進められたのが運用方法の検討と確認。
音声ガイドの導入は初の試みということで、現場スタッフとの打ち合わせも入念に行われました。実際にドーム内で再生テストを行い音漏れが発生しないかのチェックに始まり、フリーWi-Fiの案内掲示の方法はどうするか、来場者が読み込んだQRコードはきちんとブラウザで表示されるか、またそれをどのようにチェックするかなど、プラネタリウムという施設の性格上、上映が始まってから来場者をフォローするのは難しいことが予想された為、これらはリリース直前まで入念に何度も繰り返し、アップグレードし続けることになります。

さて、概要とそれぞれの魅力を存分に引き出すキャスティングがまとまると、シナリオはプロの作家の手に渡り、本格的な執筆へと進みます。
5つの星空解説はそれぞれお子さま向け、スタンダードな初心者向け、専門的な用語と視点を交えた上級者向け、他にもギリシャ神話と絡めた芝居仕立てや星座漫談とバラエティ豊かなラインナップを揃えていますが、中でもお笑い芸人がナレーターを務める解説は、収録の際に芸人自身がネタとオチに手を加えてくれたことにより、さらに魅力的な仕上がりとなったそうです。

映像の制作に関しては、実はその作業量自体は通常のプラネタリウム作品よりも少なかったといいます。
というのも、通常は音声と星空(映像)の動きによって作品が進んでいきますが、今回は同一の星空を見ながら別々の音声を聴くという試みから、星空自体に大きな変化を必要としなかった為、その分の作業量が控えめになったのだとか。
そうはいっても、先に述べた通りあれだけの最新・高精細な映像技術です。使わないなんてもったいない!筆者はここに制作スタッフの新しい試みに対する挑戦的な姿勢と計算を感じました。映像技術をサポート(空間演出)に徹させることにより、主軸に据えた新たな手法(スマホ音声ガイド)をより際立たせる狙いや、1本あたりの尺を10分と短くした為、これをテンポよく見せる計算であえて映像の動きを減らした「引き算の演出」だったのではないかと推察します。

1-4 制作会社選び、選んだ音声ガイドは

声をかけた制作会社は2社。声掛けのタイミングは早く、アイデアが出された後すぐに連絡をとったそうです。
これまで扱ったことが無かった為、そもそも音声ガイドとはどの様なものなのか?まずはそれを知るところから始まりました。様々な質問や要望のやり取り、サンプルページの作成などをする中で、レスポンスの早さとフレキシブルな対応が安心感に繋がったT社を選定することになります。もちろんリアリティのある料金だったこともポイントでした。

導入した音声ガイドシステムは、ブラウザ型のスマホ音声ガイド。プラネタリウムならではのポイントとしては日替わりアクセスコードの発行とボリューム確認用テスト音声の追加が挙げられます。

『星の美術館』は先に述べた通り音声がメインとなる為、来場者の音声コンテンツへのアクセスの管理は必須です。そこで導入したのが日替わりアクセスコードの発行機能でした。当日限り有効なQRコードを毎日生成することにより、来場者の音声へのアクセスも当日に限定することを可能としました。

また、星空解説を選択する前に音量調節用のテスト音声を設置することで、上映が始まってから音量を調整し、再度聞き直す等といった全体の進行に乱れがでることを防ぐとともに、初聴で快適に音声を楽しむことができる状態を確保することができました。

このようにして作られた星空解説と映像、運用マニュアル、音声ガイドシステムとを掛け合わせ2月10日『星の美術館』の上映はスタートしました。制作期間は約半年。ですが、これでもプラネタリウム作品としては短い方なのだというから驚きです。

音声ガイドとしての特徴と新たな可能性

2-1 音声コンテンツは選べる5種類

それではいよいよ音声ガイド的な切り口から『星の美術館』について考察してみたいと思いますが、まず何といっても音声コンテンツが5種類あるという点です。本作の基本にして最大の特徴といえるでしょう。
それぞれを並べてみると

ナレータープラネタリウムが久しぶりな方楽しみながら星を見上げたい方星の知識を深めたい方
ドラマチックなギリシャ神話俳優
笑える!和な星空解説お笑い芸人
天文学者が語る星空解説天文学者
星座初心者にもぴったり声優
小学生も楽しめる星空解説声優

このように幅広いコンテンツを用意することで、来場者に選ぶ楽しみを提供すると共に、家族や友人などと来場した際に“異なったコンテンツを選びつつも同じ時間を共有する”という、これまでのプラネタリウムには存在しなかった楽しみ方を生み出しています。
また有名俳優や声優・お笑い芸人を起用することで、それぞれのファン層へのリーチしている点も忘れてはいけないポイントです。

2-2 可能性① 新たな視点から生む新たな需要

この“5つの音声ガイド”という発想から、音声ガイドの新たな可能性が見えてこないでしょうか?
注目すべきは『1つの対象(映像)に対して5つの楽しみ方を用意する』という点にあると思います。
『星の美術館』の5つのコンセプトを仮に美術館にあてはめたらどうなるでしょうか?

  • 俳優が絵画の場面を演じ語るアートツアー
  • お笑い芸人と笑って巡るアートツアー
  • 美術評論家が語る深堀りアートツアー
  • 初心者向け“美術館の楽しみ方”アートツアー
  • 小学生も楽しめるアートツアー

いかがでしょうか。音声ガイドを補助的にではなく、新しい視点を提供する手法として積極的に活用することで、展示自体はそのままに新たな魅力の創出による新規の顧客層の開拓や既存の顧客の再訪を促すことができそうではありませんか?

挙げた例にはあえてそれぞれツアーと入れましたが、この手法は1つの作品を対象としたものではなく、施設全体を対象としても十分に成立する、対象を絞るも広げるも自由自在な点も見逃せません。有名人を起用する必要もありません。必要なのはどのような切り口で見せるのか、柔軟な発想力のみです。

2-3 イマーシブ・オーディオを意識した演出

次に挙げたい音声ガイド的切り口は、近年再び注目を集めている音声再生方法であるイマーシブ・オーディオの手法を取り入れている点です。

イマーシブ・オーディオとは、
「立体音響」や「3Dサラウンド」などとも呼ばれる360度全方位からそれぞれ異なる音が聞こえることにより、聞き手に高い没入感を与える再生方法を指します。
実際にスピーカーを前後左右上下などに設置する方法もありますが、現在では音声の編集時に特殊な処理を行うことによりイヤホン・ヘッドホンを通して際にスピーカーに囲まれているのと同じような体感を得ることも可能となりました。

バイノーラル録音とは、
このイマーシブ・オーディオを実現する為に用いられる録音方法の1つで、2つのマイクを人間の左右の鼓膜に見立て、実際に人間の耳に入ってくるのと同じ状態の音を収録することにより、臨場感や立体感を表現する録音方法のことです。本作の収録にも一部バイノーラル録音が用いられているとのことです。

『星の美術館』で取り入れられているのは星空解説「ドラマチックなギリシャ神話」において。
そこでは俳優演じる登場人物たちが縦横に動き回り、鳥や動物たちが躍動している様が音で再現されており、このイマーシブ・オーディオを意識した没入感演出と相性の良い構成となっており、音声ガイドの“イヤホン・ヘッドホンで聴く”という仕様を逆手に取りつつ、世の中の流行を巧みに取り入れています。

2-4 可能性② 新たな表現による魅力の向上

これらイマーシブ・オーディオの手法はこれまでの音声ガイドではなかなか活用されるケースはありませんでした。しかし音声コンテンツの広がりに合わせて、近年認知度は高まり、YouTubeなどでも容易に親しまれている音声表現の1つとなりました。
これを音声ガイドで活かさない理由はありません。むしろ、”イヤホン・ヘッドホンで聴く”の当たり前の音声ガイドでこそ、積極的に活用していくべき手法と言えるでしょう。

『星の美術館』の例にもあるように、芝居仕立ての音声はもちろん水族館や博物館、民俗資料館など環境音や音楽などリアルを表現する演出がある施設には親和性も高く、強力な武器となることは疑いがありません。
また本来施設にイマーシブ・オーディオを活用しようとする場合、大掛かりな設備投資が必要となりますが、音声ガイドを活用しての導入であれば遥かに容易に行える点も魅力です。

また新たな表現であれば、近年再び注目されているASMRをBGMやSE代わりに音声ガイドへ取り入れる演出も面白いかもしれません。ASMRについては、ビールのCMで商品名の前に入っているグラスにビールがトクトクと注がれる音、シュワシュワとした泡の音などを思い出していただければ効果の程もご理解いただけると思います。展示と関連性のある音を音声ガイドの冒頭や要所に効果的に入れるだけでもグッと聴き手を引き付けることができるはずです。

ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response:自立感覚絶頂反応)とは、聴覚や視覚から感じる心地よい反応や感覚のことで、焚火の炎が揺れる映像や薪のパチパチと爆ぜる音などをヒーリングやリラクゼーションを目的に視聴されることが多いようですが、最近では特に音に特化しているものも多いようです。
コニカミノルタプラネタリウム入口

まとめ

『星の美術館』から見た音声ガイドの可能性、いかがでしたでしょうか。
心休まるエンタテイメントをお求めの方はもちろん、新たな音声ガイドとの出会いやアイデアをお求めの方にもぜひ実際にお楽しみいただきたいと思います。

今回コニカミノルタプラネタリア TOKYOさまの数々の挑戦的な試みを伺い、筆者はつくづく音声ガイドという”枠”が揺らいでいるのを感じました。
数ある音声コンテンツと比較される中でも、なお輝く音声ガイドならではの魅力や聴く必然、そういったものへの挑戦を続けなければオワコンのレッテルを貼られてしまう時がくるかもしれませんからね。
それではまた新たな音声ガイドを探しに行きたいと思います。新しい可能性を求めて!

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